失敗させないやさしさより 成長を見守るやさしさを


 「運動が苦手なんだから、勉強を頑張るしかないよ」。我が子の将来のため言い続けていた言葉が、逆に可能性を奪ってしまっていたなんて、思ってもみなかった。
 「勉強しろ、勉強しろって、追い詰めてくる」。189への連絡で、息子はこう相談したらしいけど、全然身に覚えはなかった。塾へ送り迎えをして、夜食を作って、家族皆で応援してせっかく入学できた志望校なのに、最近の息子はうちではスマホを触ってばかりで、成績が下がる一方。「自分で決めた高校でしょ。怠けてどうするの」。励ますつもりで叱った、それだけなのに、どうして責められなきゃいけないの。
 でも子ども相談センターを交えて話をするうちに、息子にとってはただただ重荷になっていたんだと気づいた。自分にはこれしか取り柄がないと、そう納得させて勉強に取り組んできたけれど、息子はずっと部活を頑張ってみたかったらしい。そんな些細な夢すら、素直に言えない状況に追い詰めてしまっていたのだ。
 大切なのは失敗しないように先回りすることじゃなくて、失敗しても大丈夫なんだと思えるように、その成長を見守ること。今回のことから、私自身親として一歩踏み出せたのだと、息子に思ってもらえるようにしていきたい。
 
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。
 
 
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