これもひとつの家族のカタチ 子どもたちの幸せのための選択


 酒好きの夫は酔うと性格が変わり、言動も暴力的になる。夫婦喧嘩は絶えず、怯えた子どもたちが110番通報したこともあった。
 その日、娘が勉強しなかったことを叱ったときも、夫は酔っていた。「そんなんやったら出て行け」。夫の暴言に、本当に家を出ようとする娘を止めようと、思わず娘を叩いてしまった。
 「お仕事で帰りが遅いお母さんに迷惑をかけちゃいけないのはもちろんわかってるよ。わたしもがんばるから、お父さんにはお酒を減らしてほしいし、ケンカは止めて」
 娘のお願いに私は深く反省し、夫もお酒を減らすと誓ってくれた。これで家族の再出発ができれば。そう願っていたけれど、約束が守られることはなかった。こんな家庭状況では、子どもたちは辛いままだ。私はついに離婚を決めた。
 ひとり親家庭への支援制度を活用しながら、子どもたちと3人で暮らし始めた。生活のために相変わらず遅くまで仕事をする日々だが、子どもたちは私が帰るまでには宿題をすませ、家の手伝いをしてくれている。父親とも週に1度の交流は欠かさない。家族の在り方は変わってしまったけれど、子どもたちが安心できる家庭を作るためには、この選択が私たちにとっては最良だったのだといまは思う。
 
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。
 
 
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