「ネグレクト」ではないけれど 追いつめられて苦しんだ母と僕


 子ども相談センター(児童相談所)の人に「児童養護施設で暮らさない?」なんて言われても、最初はピンとこなかった。女手一つで一生懸命育ててくれた母が病気になったら、僕が助けるのは当たり前だと思っていたから。とはいえ、家事や母の介護はとても大変で、お金がないことがいつも不安だった。学校の友達とは境遇が大きく違っていたから、誰とも顔を合わせないように、休み時間は相談室にいた。そもそも人と話すことが苦手な僕が施設で知らない誰かと暮らすことは不安で……。
 でも、試しに少しの間施設で過ごしてみたら、気持ちが少し楽になったことに気がついたんだ。その後、今の里親さんに出会って、食べること、家のこと、母の介護、お金……いろいろな心配事がなくなるにつれて、気持ちが晴れていくのが自分でもわかった。久しぶりに会う母の顔色も良く見える。許されるなら、友達と一緒に進学したいという希望まで湧いてきた。
 児童相談所全国共通ダイヤル「189」に通告してくれた人、センターや施設の人、そして里親さん。真っ暗闇にいた僕と母を救ってくれたんだと、今、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。
 
 
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