見知らぬ人からの189は 私たちを見守る誰かがいる証だった


  子ども相談センターの人が我が家を訪ねてきたのは、私が育休を終え、職場復帰を迎えようとしていたタイミングだった。「子どもを叱る怒鳴り声が聞こえる」と相談する電話があったらしい。「近所のだれがそんな連絡を」と思ったら、最初は冷静でなんかいられなかった。
 虐待しているつもりは全然なかった。だけど、何度叱っても言うことを聞いてくれない息子に、「あんたなんか、死んでまえ」と攻撃的な言葉を向けてしまうことはたしかにあった。
 「でもお母さん、怒鳴ってもいいことないですよね」。子ども相談センターの人に話を聞いてもらううちに、どうしてそんな行動をとってしまったのかがだんだんと分かってきた。仕事と子育ての両立に対する不安。コロナ禍によるストレス。自分自身、両親から厳しくしつけられた苦しい経験があり、息子には同じ思いをさせたくないと思っていたのに。
 子ども相談センターの職員さんは、困った時に頼れる子育て支援サービスについても教えてくれた。あのまま誰にも気づかれず、仕事と子育てに追われるようになり、日常的に息子に暴言を吐くようになっていたら、どうなっていただろう。一本の電話が私に子育てを見つめ直すきっかけをくれた。
 
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。
 
 
パソコン用の画像スマホ用の画像