「どうか、幸せになってね」 子の未来を願って、下した決断
「妊娠22週を過ぎてますね」。お医者さんにそう告げられ、頭が真っ白になった。
体に違和感を覚えつつも、目をそらし続け、親に付き添われてやっと向かった産婦人科。別の命が自分のお腹にいることを、わたしは認められなかった。
「せっかくの命、お子さんを求めている人に託しませんか」。望まない妊娠を子ども相談センターに相談すると、特別養子縁組制度を教えてくれた。ようやく育ての親に託す決心をしたのに、出産を経て、本当に手離すのかと気持ちは揺らいだ。
感情的になりやすいわたし。子育て中、ついイライラしてしまうことはきっとある。それにパートナーはいない、親にも頼れないのに、経済的に苦しい状態で育てられるのか。赤ちゃんに悪影響があるんじゃないか。赤ちゃんの、そして自分の人生を思い、悩んで悩みぬいて、そして決断したことに、いまは後悔していない。
いったいどんな子になるだろう。そう思いながら、物心ついたときに渡してほしいと、手紙と写真を預けた。里親さんのもとで、赤ちゃんはいま元気に成長しているらしい。道は分かれたけれど、精一杯幸せになってほしいと、心からそう願っている。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。