エスカレートした夫婦ゲンカが 意図せず、子どもを傷つけていた
互いへの思いやりで
夫婦ゲンカは減らせる
玄関の前に立っている警官を見て、それまで身体を突き動かしていた怒りが一瞬で冷めた。夫婦ゲンカを耳にした近所の人から、通報があったらしい。
お願いしていたのに、ゴミ出しを忘れた。子どもの面倒を見てくれない。夫に対するささいな不満が、積もり積もった末に爆発した。子どもが怯えて泣き出しても、激しく言い争うのを互いに止められなかった。
「それって心理的虐待なんですよ」。後日、子ども相談センターが家庭訪問に訪れて、初めて「面前DV」を知った。
たとえ子どもに直接暴力を振るっていなくても、両親が争う姿は子どものこころを傷つけてしまうと諭された。家庭で安心できない状態が続けば、落ち着きがなくなったり、お友だちとトラブルを起こしたり、問題行動にもつながってしまうらしい。
それから我が家では、「話し合いたいことは、子どもが寝静まったあと、もしくはLINEで」とルールを決めた。子どもに見せなくなっただけで、ケンカがゼロになったわけじゃない。だけどケンカが減ったのは、互いをいたわる言葉が増えたからだろう。「おつかれさま」「ありがとう」。その一言を互いに求めていたのだとわかった。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。