愛情を感じられないからこその辛さ 支援の手を借りて子どもと向き合う
何をやってもぐずる息子の泣き声を聞くと、「お前のあやし方が悪い」と責められている気がした。なぜ我が子を可愛いと思えないのか。わがままが許されなかった子どもの頃の感情が蘇ってきた。私自身、親に甘えた経験なんてないのに、どうやって子どもに接すればいいんだろう。子ども相談センターに助けを求めたのはそんな時だ。
「手を上げるくらいなら、気持ちが落ち着くまでの数分、お子さんから離れたっていいんだよ」
センターの職員さんの言葉に、いまにも押しつぶされそうだった気持ちが、少し楽になった。
「お母さんの負担を減らしましょう」と提案され、保育所、ショートステイと少しずつ頼れる先を増やしていった。自分から「子どもの発達検査を受けたい」と言い出せたのはきっと、ここはちゃんと悩みを受け止めてくれる場所だと、信じることができるようになったからだ。
子どもの特性に納得しつつも、知ったからと言って上手に関われるようになるわけじゃない。息子はいま小学生になった。親の手を必要としなくなるまで、上手くいく時としんどい時が波のように訪れるだろう。「ひとりじゃない」。頼れる先があるという安心感が、心のお守りになっている。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。