「ひとり親だけど、独りじゃない」 予期せぬ心の危機を乗り越えて


 「助けてください」。藁にもすがる思いで、189へ電話をかけた。
 わたしに内緒で、夫が借金をしていた。これまでの信頼を裏切られたショックは、立ち直れないほど大きかった。不信感しかない夫との関係は当然上手くいかなくなり、精神的に追い詰められていった。幼い2人の子どもを育てる心の余裕をどんどん失い、悩んだ末の電話だった。
 子どもと離れているあいだの時間は、再び一緒に暮らすための準備期間。離婚、精神科の受診、生活保護の申請と、悩みを一つずつ解消していった。子どもたちの定期的な帰省は、「次また会うために」と元気をくれた。
 いざ「施設から引き取りを」となった際には、「1年間でひとりずつ」と子ども相談センターさんが計画を立ててくれた。保育園への入所が決まっていたおかげで、子育ての負担が一気に増える心配はなく、数週間に一度のセンターの人たちの訪問で、孤独に苦しむこともなかった。
 そして実現した念願の親子3人での暮らし。生活のリズムが整ったら、次はわたしが社会に出ていくステップだ。家庭と仕事を両立する夢は、「いますぐに」とはいかないけれど、地域のひとり親家庭支援などを頼りながら叶えていきたいと思っている。
 
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。
 
 
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