「離れて暮らしてよかった」 そう思える日が必ず来ると信じて
苦渋の決断だった。夫の暴力に耐えかねて、我が子を置いて逃げた。そのまま離婚が決まり、親権は夫が持つことになった。
息子に会わせてほしいと連絡しても、元夫は相手にしてくれなかった。もう二度と、この手で抱きしめられないのかもしれない。そんな不安を抱えながら、新しい職場で働きはじめたときだった。突然、元夫と息子がやってきたのだ。
元夫は家に来るなり、息子を置いて帰ってしまった。また一緒に暮らせるのはうれしいけれど、何とか生活を立て直そうとしているいま、とても子育てと両立できない。困ったわたしが頼ったのが、子ども相談センターだった。
いま、息子は児童養護施設にいる。最初は落ち着きがなく、夜泣きも酷かったけれど、施設での生活に慣れてきた様子だ。なかなか会いに行けないわたしの代わりに、子ども相談センターの職員さんが施設へ足を運んでくれている。生活基盤を整える準備期間を持てたおかげで、アルバイトから正社員になれたし、子育てしやすい部屋へ引っ越しもできた。息子を引き取るため、着々と歩みを進めている。
職員さんが撮ってくれた息子の写真を見つめ、今日もがんばろうと気を引き締める。一日でも早く、いっしょに暮らす日を目指して。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。