言葉の壁を越えて生まれた こころのつながり
これは大事件だ、と思った。クラスメートとトラブルがあったと、学校から呼び出された。「家でも指導してください」。日本語が得意ではない私は困ってしまった。記憶するのが苦手な娘。約束事を決め、きびしく指導した。
約束を覚えてるか、言わせて確かめようとした。けれども自信なさげな小さい声しか出さない。泣き出す娘に思わず手が出た。
「お父さんが怖いから、家に帰りたくないと話しています」。帰宅時間を過ぎても帰らない娘を探していると、交番から連絡があった。子ども相談センターの人も駆けつけ、娘は一時的に保護されることになった。
子ども相談センター、学校の先生方、市の職員の方たちと面談を繰り返すうち、責められたのではなく、私たち家族を心配してくれていただけだと分かった。「最近娘さん見かけんけど、どうしたんや」。声をかけてくれる近所の人もいて、私たちは一人じゃないと感じた。
いまだに、学校でのトラブルは絶えない。だからこそ周囲の力を借りながら、優しく見守っていこう。庭で水やりをしながら、植物の成長をうれしそうに見守る娘の姿を見るたび、決意を新しくしている。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています。